夢―忘れたはずの記憶―『崩壊』
〜雪の少女の記憶〜

「おにいちゃん……。さむいよ……」
 声の出ない兄に少女は問い掛けました。
 永遠に目を覚めない事も知らずに。
「おにいちゃん……。おうち、ないよ……。それに、おかあさんやおとうさんは、どこにいったのかなぁ……?」
 少女の顔から涙がこぼれだしてきました。
「おかあさん……おとうさん……どこへいったの? ……さむいよ……う、うぅ…っく…」
 寒さが小さな少女の身体に襲い掛かりました。でも少女は……
「おにいちゃん……わたし、なかないよ……。ないたら、おかあさんとおとうさんがしんぱいしちゃうもん……。わたしははね……おかあさんとおとうさんがわらってるところが、すきだよ。だからわたし、なかないもん……。きいてる? おにいちゃん……」
 泣きたくても、泣かない少女……。
 少女は両親と再会するために泣かない。
 それは、会えることを信じてるから。
 でも、
 それは永遠に叶わない……。
 もう、この世界にいないから……。
 そして少女にも、再び絶望が。

―ゴゴゴゴゴゴッッ!!―
 地震ではなかった。
 雪が耐え切れなかったのでしょう。
 雪崩がこの街に襲いかかろうとしています。
 生き残った人々は逃げ戸惑います。
 でも……遅かった。
 雪崩はもう目の前まで来ていました。
 もう終わり……。
 何もかも……この雪崩が、
 希望という光さえも飲み込んでしまった。人々も兄、両親も……
 そして、少女も……