☆1☆ 全ての始まりはこの日から
〜Material Element〜

「ん? 何これ……?」
 テーブルの上には何やら手紙が2枚置かれていた。
 私はその片方の手紙を見る。
「なになに……?」
 それは父が書いた字であった。
 その内容とは
「会社が倒産しました。もう父さん、倒産しちゃったから家に帰れないよ。なんちゃって(笑い)あははははははは……。って!! 笑い事じゃないよ!?」
 父は大手企業会社の社長をしていた。
 最近は不景気で会社の利益も出なく、赤字ばかりだと聞いていた。
 けど……まさか倒産だなんて。
「ん? 何これ?」
 私は最後のほうに『裏を見てね♪』と書かれていたので、裏を見る。
 するとそこには……
「一、十、百、千、万……。じゅ、十億円!!? え……これって……。やっぱり、借金だあーー!! どうしよう……ってお母さん!?」
 大きく書かれた借金額という文字。
 慌てて部屋に居るはずの母を呼んだけど、母は一向に部屋から出てこない。
 私は心配になって母の寝室へと向かい、母を呼んだ。
「お母さん? 居ないのー? 返事してよー」
 部屋からは返事がなかった。
 しかたなく私はリビングに戻り、ソファーに座る。
 そして私はもう1枚手紙があったことに気付き、そのもう1枚の手紙を見た。
 それは紛れもなく母の字。
 そこに書かれてあった内容とは
「瑠璃ちゃん、ゴメンなさい。もう私は生きていけられないと思い、この家を出ることにします。瑠璃ちゃんには悪いけど、健ちゃんと二人で頑張って生活してね♪ もちろん、私は貴方達のことが心配だから、金庫に百万円ぐらい残してあるから、もしピンチの時はそれで凌いでね♪ それとちゃんと、学校にも行って仕事もするのよ。By瑠璃ちゃんが大好きなお母さんより♪ って……お母さん……。何でこんなこと内緒にしてたのよ……」
 私はその手紙を見て呆れた。母はいつも通り呑気だったから。
 手紙中に書かれていた瑠璃という名前は私の名前、斎藤瑠璃。
 健と書かれていたのは、私の二つ下の弟、斎藤健。
 私は高校生だけど、健はもう中学卒業間じかだと言うのに……。
 子供のこと、ちっとも考えてなかったんなんて。
 だけど、百万かぁ……。
 何ヶ月持つかな……?
 それに、
「そういえば……使用人さんの顔も見えないと思ったら……。解雇されていたのね」
 お金がこんなに無いんじゃ、使用人も頼めない。
 これからは健と二人で自給自足しなくちゃいけないの……。
 そんな事を考えてると、自信を無くしてしまう。
 私は幼い頃から、使用人さんの後姿ばかり見ていた。
 何か私がしようとすると、全て使用人さんがやってくれるから、楽だったけど……。
 今考えて見ると、私に出来る事と言えば調理ぐらいしか出来ない。
 掃除、洗濯は全て使用人さんがやってくれていたから……。
「はあ……。お父さんとお母さんの馬鹿」
 だけど今さら愚痴を言っていてもしょうがないよね。
 今から……何をしようかな?
 炊事、洗濯、掃除……。
 何だか、かったるいよね……。
 こんなただ広いだけの屋敷を掃除するなんて……。
 簡単に言えば、普通の高等学校の敷地内を大掃除するぐらいだから……。
 一日掛かりますよ。これは……。
「とりあえず、図書部屋に行ってみますか」
 考えた末、私は何千冊もある図書部屋に行くことにいた。
 ……これって単なる暇する時間の弄び?
 ま、いいか。
 本当に暇なんだから……。
 ……これを現実逃避って言う人も居るけど。