KEY−21 永遠に待ち続ける場所
Date//Unknow
月見丘の頂上、大きな木の下。
約束した場所。
そう……あの人と。
再会しようって。
だけど、
……どうしてだろう?
もう、兄さんは来ないとわかっているのに。
もう、兄さんは私のことを忘れてしまっているのに。
どうして、私はここで待つのだろう?
「ばかだよね……私」
勝手に期待していて、
それに裏切られて。
傷付くのはわかっていたのに。
ついついここに来てしまう。
なにやっているんだろう。
小さな可能性を信じているから?
「こんなところで待っていてもしょうがないのに……」
もう、ここで待っていても合えるはずがないのに。
こうなること、わかっていた。
なのに……。
兄さんがここに来るのを期待してて、
着たら、私は遅いよと文句を言って、
兄さんにじゃれついて、甘えたい。
そんな光景を期待していた。
だけど、それは裏切られる。
それが運命だから。
一生、兄さんと会えない運命なのに。
それでも、縋りたくて。
甘えたくて、怒りたくて、泣きたくて。
だからこうして待ち続けてしまう。
「……寂しいよ、兄さん」
目の前を通り過ぎる人たち。
私を気が付かないまま通り過ぎる人たち。
だって、それは私の存在が消えてしまっているから。
みんなに私が見えてないから。
苦しい。
こんなに胸が苦しいなんて。
誰も私の存在に気が付いてくれない。
ひとりぼっち。
「もう、独りは嫌だよ」
何年もこうして私は待ち続けている。
独りじゃない時が来るのを待っている。
そう、兄さんが来るまで永遠に……。
だけど――
「もう、永遠に待ち続けるのは嫌だよ」
だって、私は――
「兄さんに今すぐに会いたいんだよ」
これは叶わぬ願い。
決して、叶わないまま、
泡沫のように消える想い。
どうせなら、
これが――
もうすぐ覚める夢でありますように。
そう願うも、この悪夢は終わらない。脳は覚醒しているのに『覚めて』という思いが通らない身体。身体はまだ起きてはいない。
ちょっとした時間の歪みが、こんな事態に陥ってしまうなんて思ってもいなかった。
そう、こんなはずじゃなかった。
あの時、永遠を刻む時計に設定の変更を言うんじゃなかった。
後悔しても、後悔し切れないほど罪悪感だけが心の中に残る。
私は今、やってはいけない事をやっている。
実際、今はやってはいないけど……。
それでも、今はやっている事。
違う、やっていた事をやっているんだ。
自分の意志ではどうでも出来ない。
身体だけが勝手に動いている。
人形劇の人形みたいに。
今奏でている物語は……私の罪。
もう……思い出さないと誓った物語。
「兄さん、ゴメンね……。今まで嘘をついてて……」
そう呟き、目を瞑った。
……全ての現実に償いながら。
さあ、再び奏でよう。
この、永遠の中で、
あの、幸せと苦しみの一年間の物語を。
あの、共に分かち合った物語を。
あの、再会と決別の物語を。
そして……
最初で最後の、私が奏で始めた序章の物語を。
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