学校から帰宅してまず真っ先に行くのがパソコンの前だ。
今日も右京留奈は退屈だった学校から、パソコンによって開放されるのであった。
留奈の目当ては最近流行のLUNAシステムを導入したシュミレーションオンラインゲーム、Caesius Terraをやる事だ。
LUNAシステムとはLocal Unite Network Adventre(構内結合型ネットワークアドベンチャ−)からきていて、今までゲームでは出来なかった人の心をインターフェイスに送り、自分で作ったキャラクターをそれがまるで自分自身かのように、操作できるというのだ。しかも、LUNAシステムのゲームは現実との時間の流れが違い、ゲームの中で一日過ごしてしまっても、現実世界では二四分しか経っていない。その気楽に長く遊べるのが人気の秘訣だろう。
Caesius Terraは恒星間移民が進んだ時代の宇宙を舞台とした、戦略シュミレーションゲームである。プレイヤーはその中の元首、または軍将となり、銀河を統一してクリアすることが目的である。
留奈はパソコンを立ち上げ、青色のヘルメットを被り三日月のアイコンをクリックする。すると急に体の力が抜け、幼い子どものようにすーすーと眠ってしまった。留奈の心がCaesius Terraの世界へとログインされたのだ。
留奈のキャラクターの外見は、設定年齢17歳で蒼いミドルヘアー、階級は少佐の女の子である。キャラクターの年齢、性別は自分の性別に固定されるのだ。ログインネームは名前と同じ、『ルナ』を使っている。留奈はルナと同じように自分が可愛かったらなぁと思ってしまうのであった。
ルナが属している国家組織は『サテライトムーン共和国』。太陽系の月を母星とした国家である。サテライトムーン共和国は、所有惑星最高保持している『地球連合国』と同盟しており、戦争も国家自身であまり行かない平和的な国家である。戦争の時はいつも地球連合国の援軍として行くだけだ。
ルナはその国家で開発の担当をしていた。ルナの知力のパラメータはCaesius Terraの世界で1位のキャラクターだ。ルナの名前は全ての国家に知られている。それに比べて、戦闘力、防衛力、指揮力、支援力、政治力は最低なものだ。戦場ではあまり使えないだろう。
今日も開発作業をしていた。しかし、いつまでも開発じゃつまらない。そこでルナは元首、クロノスに戦場に出してもらおうと相談しに行った。
クロノス:……駄目だ
ルナ:ええっっ!? どうしてですか!?
ルナは拒否の理由を聞く。
クロノス:行ったら……間違いなく負けるぞ?
ルナ:そんな〜……
ふらふらしながら腰を落とした。
そんなルナの後ろでけらけら笑っている男がいた。サテライトムーン共和国最強の戦闘力と防衛力のキャラクター、マルスだ。ちなみに階級は大佐である。
マルス:たしかに、ルナのパラメータじゃ、いてもいなくても同じだもんな
ルナ:柳也兄さんは黙ってて
マルスは留奈の兄、右京柳也がプレイしているキャラクターだ。
マルス:おいおい、ネットゲームで本名はタブーだぞ留奈。どうしても、俺の事を本名で言いたかったのなら、兄さんと言え
ルナ:……兄さん、現実世界に帰ったら本気で殴るから(怒
マルス:おぉ、こわ。だがこのゲームを留奈の分まで買ったのは誰だ?( ̄ー ̄)
柳也が留奈の誕生日に買ってきたものがこのゲーム、Caesius Terraだ。
ルナ:……うぅ〜(+_+)
マルス:という訳で、俺に怒るな。怒るならクロに言え
クロとは、クロノスの事をマルスが呼んでいる愛称だ。
ルナの立場が不利になってきた。ここで何かアピールしなければと、ルナはそう思った。とっさに思いついたことを言葉に出す。
ルナ:私は知力なら誰にも負けない天才少女! 私の知謀で、戦場を華麗に混乱させる!
マルス:お前は、専門外の事は馬鹿だけどな
すかさず兄がツッコミをいれる。
ルナ:バカって、言うなー!ヽ(`Д´)ノ
マルス:何なら、ステータス表示してみるか?
マルスはメニューを開き、全員のステータスを開いた。
パラメータの最高値は150。ランクはF〜SSまで。
ルナの知力はこれ以上上がらない。
クロノス、マルスのパラメータ値は平均的で戦闘に優れている。それに比べてルナは酷いものだ。
唯一ルナが勝っているパラメータと言えば、魅力だけだった。
マルス:どうしたら、こんなに知力が高くなるんだ?(ーー;)
自分とルナのステータスを見比べ、マルスは言う。
ルナ:兄さんがずっと開発作業をやってろって言ったからじゃない!
マルス:いや……開発やっててもすぐにはステータスが成長しないだろ?
マルスの言ったことは本当だ。
このCaesius Terraの成長システムは一般的な上がり方はしない。と言うのも、レベルアップというものがこのゲームが無い。その代わり階級が上がった時にボーナスとして、パラメータが振り分けられるのだが、それも全パラメータに2Pずつだけなのだ。
ルナ:あーそれはね、私、開発の時のミニゲームを全部クリアしちゃったから
マルス:ちょっとお前……、あれを全部クリアしたのか!?Σ(゜д゜|||)
ルナ:うん。パズル系のゲームなんて簡単だし
ルナは笑いながら言う。
ルナが言うパズル系ゲームは知力のランクによって変化するゲームだ。
ランクが低いほど内容は簡単だが、高くなってくるほど、その難易度は理不尽極まりない物となっていくのだった。
そのSランクの内容は、一分以内に200ピースのジグソーパズルをクリアせよ……などなど。
マルス:お前、頭おかしいんじゃないか?
ルナ:兄さんに言われたくないよ
マルス:それはそうとな、戦闘というものは知力だけじゃ勝てないんだよ
ルナ:戦闘力が無くても、魅力があるじゃない
魅力は、戦闘中に表示される士気力の上昇の速度である。
魅力が高ければ高いほど士気が上がりやすい。
だが、マルスは笑いながらルナにこう言った。
マルス:ルナの身体に魅力なんてないし、そもそも現実世界とあまり変わらないんじゃないか?(=´∇`=)
ルナ:な、な……兄さん!?それじゃあ、私の身体に興味がないってこと!?(>_<)
マルス:うん。興味ない(・ε・)
ルナ:がーん……そんなことは……OTZ
ルナは思わず自分の身体を見てしまう。あまり大きいとは言えず、小さいとも言えない微妙な胸。背丈も160センチ有るか無いか微妙なところ。たしかに現実世界の自分に似ている身体つきだった。
クロノス:実の妹にその言葉はないんじゃないか?
マルス:ん? 本当なことだし。別にこれぐらいで弱音を吐く妹じゃないからな
ルナ:……わかったあああ!! 兄さんが考えてること!!b(`―゜)
急に立ち上がり、拳をグッと握りながらガッツポーズを決めていた。その瞳は輝きにみちている。
マルス:ほらな
クロノス:……確かに
ハーシェルはルナの行動を見て頷いた。
ルナ:きっと私に嫉妬させておいて、後から兄さんが謝ってきて『ごめん俺が悪かった』『ううんいいの。私は兄さんが謝ってきた事が嬉しいから』『じゃあ、許してくれるのか?』『うん。許してあげる。大好きだよ〜兄さん』みたいに、抱き合うシーンまで発展する気でしょ!? ……このケダモノ!! へんたい! 変態! へんた〜い!(>_<)
マルス:お前の妄想には、ブレーキという物がないのか?
ルナ:変態は黙ってて!今はクロノスさんと話してるの!
マルス:そっか……。あ〜あ、俺の軍隊の副指令として、連れて行こうかと思ってたけどなあ……。うん、残念だ
その言葉にルナはぴくっと動き、瞬時にマルスの方へ振り向いた。
そして手を組み、瞳をうるうるさせながら口を開く。
ルナ:可愛い妹のためにワガママ聞いてプリィズ♪(^_−)☆
マルス:都合のいい妹め……。何だ?言ってみろ
マルスは、またか……と思いながら、ルナの我侭を聞いた。
ルナ:その……兄さんの隣で頑張らせてはくれないかなぁ〜、って(*^-^*)
マルス:却下。時効だ
ルナ:そんな〜、そんな事言わずに連れて行ってよぉ〜兄さん(T-T)
マルスは頭をかきながら考える。
どうしたものか、と。
マルス:仕方ないな……。クロ、俺がついてるから、ルナを連れて行ってもいいか?
クロノス:ああ。良いよ。だから頑張っておいで
クロノスの言葉を聞いてルナは感動のあまり声が出ない。
ルナはクロノスに向かって瞳をキラキラさせながら、お辞儀をしている。
ルナ:じゃあ兄さん、早くいこ♪ 戦闘が待ち遠しいよぉ〜(>_<)
ルナはマルスの腕を強引に引っ張って、戦闘の準備が行われているガレージへと
クロノス:さて……、これからどうなるやら
クロノスはふふ、と笑いながら自分の持ち場へと戻った。
その妙な笑みは何かが起こると確信していた。
何かが……起こると。